RADAR SIGNAL PROCESSING

レーダ信号処理

気象レーダは我々の生活を支える重要な技術です.
大阪大学・電気通信大学・JAXAの研究者と協力して,
最先端気象レーダの更なる高性能化を目指しています.

近年,局所的な大雨や竜巻による被害が増えています.
既存の気象レーダは観測に5~10分の時間を要するため,
短時間で変化する気象現象の観測や予測が困難でした.

高速観測のために,フェーズドアレイ気象レーダ (PAWR:
Phased Array Weather Radar) が開発されました.
PAWRは,アンテナを1回転させるだけで,
3次元降水分布を約30秒で取得できます.

本研究室では,
PAWRの更なる高性能化を目指し研究を行なっています.

画像: 大阪大学吹田キャンパスにあるPAWR
(情報通信研究機構)

非線形ビームフォーミングと気象データ計測

 PAWRでは,アレイアンテナが受信した信号に対してビームフォーミング (BF) を適用させ,その結果から各3次元位置における雨量や風速などの気象データを推定します.本研究室では,BFとその結果に適用させる推定アルゴリズムの両方を改善することで気象データの計測精度を向上させています.我々が開発した「凸最適化に基づく非線形BF手法」は,従来の線形BFと比べて降雨分布をより高分解能に計測できます.

日本語論文 (ダウンロード)
北原 大地, 森川 侑奈, 平林 晃, 吉川 栄一, 菊池 博史, 牛尾 知雄,
"フェーズドアレイレーダにおける隣接仰角間の類似性を利用した気象パラメータ推定,"
第32回回路とシステムワークショップ, 東京, Aug. 2019, pp. 129–134.

英語論文 (ダウンロード)
D. Kitahara, M. Nakahara, A. Hirabayashi, E. Yoshikawa, H. Kikuchi, and T. Ushio,
"Nonlinear beamforming via convex optimization for phased array weather radar,"
2018 Asia-Pacific Signal and Information Processing Association Annual Summit and Conference (APSIPA ASC), Honolulu, HI, USA, Nov. 2018, pp. 1831–1835.

3次元気象データの圧縮観測と再構成

 PAWRは半径60km (距離分解能100m) の全天気象状況を30秒間で観測できますが,30秒ごとの取得データ量は約491MBにも及びます.本研究室では,この大規模気象データを圧縮して転送するために,ランダム間引きで取得データ数を削減し,凸最適化で間引いたデータを再構成する手法を開発しました.我々の手法は,1/4に圧縮した取得データから誤差率約13%で全データを再現します.

日本語論文 (ダウンロード)
川見 亮介, 北原 大地, 平林 晃, 吉川 栄一, 菊池 博史, 牛尾 知雄,
"フェーズドアレイ気象レーダのデータ圧縮と3階テンソル辞書学習を用いた高精度再構成,"
第33回信号処理シンポジウム, 東京, Nov. 2018, pp. 227–228.

英語論文 (ダウンロード)
R. Kawami, D. Kitahara, A. Hirabayashi, E. Yoshikawa, H. Kikuchi, and T. Ushio,
"Three-dimensional data compression and fast high-quality reconstruction for phased array weather radar,"
IEEJ Transactions on Electronics, Information and Systems, vol. 140, no. 1, pp. 40–48, Jan. 2020.